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ペッシュ・プラットは桃界の「ブサかわ」スター

  • 執筆者の写真: Hitomi
    Hitomi
  • 7月24日
  • 読了時間: 4分

まだまだ暑い夏。この季節、が美味しい。


フランスに来たらぜひ味わってほしいのが、ちょっと歪で珍しい「ペッシュ・プラットpêche(桃) plate(平らな)」。「桃」と言われて誰もがイメージする形とは全然違って、平たい。


マルシェでは真ん中に並べられる桃界のスター!
マルシェでは真ん中に並べられる桃界のスター!

マルシェの桃売り場でも中心に置かれている桃界のスターだ。英語では「フラットピーチ」。その形から「ドーナツピーチ」とか「サターンピーチ」とも呼ばれ、夏になるたびに人気が高まっている。マルシェの桃売り場でも中心に置かれている桃界のスターだ。いわゆる「ブサかわ」? その円盤状の形がなんとなく愛らしく、種が小さくて食べやすい。


穴が小さいドーナツ?とんがってるからサタン?©Les Plaisir Fruités
穴が小さいドーナツ?とんがってるからサタン?©Les Plaisir Fruités

新種のようだが、遺伝子組み換え(GMO)とは一切無関係だ。日本では蟠桃(バントウ)と呼ばれていて、歴史は中国まで遡る。


平桃(学名:*Prunus persica* var. *platycarpa*)は、2000年以上前に中国西部で、一般的な丸い桃の突然変異によって生まれたと考えられている。中国では「平桃(パンタオ)」または「扁桃(ビエンタ)」。その実を食べると不老不死になると言われ、「仙果(シアングオ)」、「仙人の果実」とも呼ばれていたらしい。当時の皇帝たちはこの果実を好んだ。その理由は、不老不死もさることながら、手に持って食べても果汁が顎髭(あごひげ)にこぼれ落ちないから(笑)。




その後、日本ペルシャ(アレクサンダー大王を魅了した)へと伝わり、さらにギリシャを経て、最終的にヨーロッパへと渡った。しかし、当初は、傷みやすく繊細すぎるためヨーロッパ市場には不向きとされ、そのまま忘却の彼方に。


20世紀後半にそれが一変した。フランス国立農学研究所(INRA)の研究者ルネ・モネ(René Monet)が、風味豊かでありながら輸送にも耐えうる育種系統の選抜を、25年間、根気強く行い、その甲斐あって「ペッシュ・プラット」が誕生。この品種は他の桃の木よりも早く花を咲かせるのが特徴だ。


春のペッシュ・プラット©La taille des péchers©
春のペッシュ・プラット©La taille des péchers©

平たい形の桃が正常に育つためには、その木が「平たい形」と「丸い形」の両方の遺伝子を持っていなければならなかった。「平たい形」の遺伝子x2では、果実は成長しない。つまり、この円盤のような形をした桃を今、味わえるのは、その桃の木の第6染色体上で、高さよりも幅の方向に多く細胞が分裂した結果、果実はある絶妙なバランスで徐々に扁平化し、この形状となる。こうして、遺伝学的に見れば「半分は扁平、半分は円形」という形質が維持されるのだ。奇跡の「ブサかわ」誕生秘話である!


ちょっと歪なブサかわ
ちょっと歪なブサかわ

さて、平たいから食べやすい、それはわかったが、従来の桃とどう違うのだろう?、健康面や味わいの点ではほぼ同じらしい。が、糖度や食感、料理への用途に微妙な差異があるようだ。


そろそろ収穫間近©Déco Verte
そろそろ収穫間近©Déco Verte

栄養面で見れば、平くても丸くても、同じ桃として100gあたり約40kcal、水分、食物繊維、複合糖質を豊富に含んでいる。が、平たい桃は「水分、食物繊維、複合糖質」に富んでいるだけでなく、微量元素、ミネラル、ビタミンが含まれ、とりわけルティンが抗酸化作用を発揮し、目の健康維持にも役立つという。


分析によると、平たい桃は丸い桃に比べて酸味が少なく、糖度が約9~11%とやや高く、より強い甘みを感じやすくなっているという。とはいえ、食べ過ぎない限り血糖値への影響に大きな違いはない。平たい桃と丸い桃のどちらを選ぶかは、主に食感や用途(そのまま食べる、フルーツサラダに入れる、あるいは料理に使うなど)によって決めるのがよいとのこと。


中には小さく可愛らしい種が
中には小さく可愛らしい種が

生産者側は、現在の人気の最大の理由が「その甘く蜂蜜のような風味にある。他のどの桃の品種にも見られない、繊細かつ独特な香り」とか言っているが、私は単純に形が面白くて食べやすく、小さい種も可愛いと思う。


かつては繊細で栽培が難しいとされていた品種だが、長年にわたる品種改良を経て、現在では非常に丈夫な果物となり、フランス国内のほぼすべての地域で栽培が可能。フランスのどの地域でも地元で手に入る果物だ。


「追熟」する果物(収穫後も熟し続ける性質を持つもの)だということで、私は、1週間分買ったのをこの間の暑さで冷蔵庫で保管してしまっていたが、重要なポイントとして「急激な追熟を防ぐため、冷蔵庫には入れず、涼しく乾燥した場所で常温保存すること」。


丸くないから重ねてみたり
丸くないから重ねてみたり

たくさん手に入ったら、コンポートやフルーツサラダ、ソルベにしたり、シロップで煮たり、美味しいスイーツに仕上げる人もいるかもしれない。少し通好みとして、バジルと合わせて調理するのがおすすめだとか。さらに上級者なら、生のフォアグラステーキにソテーして付け合わせも。


そんなレシピを横目で見ながら、私はやっぱりそのまま生で味わうのが一番だと思っている。シャキシャキとした食感から、完熟してとろけるような甘さまで、さまざまな熟し具合を試してみようと思う。

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